あえかなる君へ 心からの愛を
「小森ちゃん。グッズのオンラインショップのサイト、最終確認を一緒にお願いできる?」
「はーい、もちろんです」

発売開始まで二週間を切ると、何度もグッズの名前や価格、写真などを確認し、テストページでバグが起きないかを確認した。
SNSも頻繁に更新し、【先取り情報】として少しずつグッズを紹介していく。
十日前になるとインフルエンサーのあーみゃを社に招いて、グッズの使い心地やおすすめポイントを解説してもらう動画を撮ることになった。

「こんにちはー、あーみゃでーす」

やって来たのはテレビから抜け出したようなきれいな顔立ちの女の子。
年齢は二十四歳とのことだったが、十代でも充分通用しそうだ。
肌が透き通るように白く、小顔で目がぱっちりしたお人形のようで、背は高くないが手足が長いせいかスタイルがいい。

(動画よりもさらに可愛いなあ)

小森に紹介されて「初めまして」と握手しながら、乙葉は思わず緊張の面持ちになる。

「乙葉さんですね、初めまして。きれいなお姉さんって感じですね」
「いやいやいや、まさかそんな!」

慌ててブンブン手を振りながら後ずさると、後ろで柊が「おばちゃんかよ」と呟く声がした。
乙葉がジロリと振り返ると、柊は涼しい顔で「初めまして、森住と申します」とあーみゃに挨拶する。

「初めましてー。わあ、かっこいいですね。君島さんも紗理奈さんも美男美女だし、小森ちゃんも可愛いし、ここって芸能プロダクションですかぁ?」

そう言いながらぐるりとメンバーを見渡し、あーみゃは最後に赤井に目を留めた。

「あ、僕は違いますよね、ははっ」

苦虫をかみつぶしたような顔の赤井に、あーみゃはパッと笑みを浮かべてハグをした。

「わぁ、すごーい! アリスのハンプティ・ダンプティだー」
「えっ、あの……」

卵のキャラを思い浮かべて誰もが笑いを堪える中、あーみゃは赤井にギュッと抱きついて嬉しそうにしている。
赤井はみるみるうちに顔を赤らめた。

「あの、ちょっと、あーにゃさん」
「あーみゃですぅ」
「あ、すみません。あーみゃしゃん……あ、えっとあーにゃんさん?」
「ふふっ、にゃんですかー?」
「いえ、にゃんでも……」
「可愛いー! 今度ハンプティ・ダンプティのグッズも作りたーい。いいですかぁ?」

上目遣いに顔を覗き込まれて、赤井は「もも、もちろんです!」と頷いていた。

その後ようやくテーブルに移動して動画撮影が始まったのだが、あーみゃは赤井を隣に座らせて「ハンプティ・ダンプティでーす」としれっと紹介する。
そのまま「このポーチはぷっくりしたフォルムが可愛いんですよぉ。ね、ハンプティ?」と赤井に話しかける。

「う、うん。そうだね。僕のお腹にそっくりだ」
「だよねー」

即席漫才のような雰囲気ながら、全てのグッズ紹介が終わり、早速柊が動画を編集してサイトにアップする。
すると予想以上に再生回数がグングン伸びた。

【なにこのキャラ。いつ生まれたの?】
【さすがはあーみゃちゃん。鏡の国から連れて来たんだね】
【ハンプティとあーみゃちゃん、並ぶとメルヘンで可愛い】

そんなコメントに、あーみゃは「次はハンプティ・ダンプティの衣装作ってきますねー」と冗談だか本気だかわからないことを言って帰って行った。
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