妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~

3.好きなものを探すこと

 翌日からまずは自分が好きなものを探すことから始めた。

 朝食を終えた後、紙とペンを用意して机に向かう。

「お嬢様、お茶をお持ちいたしました。あら? 何をなさっているのですか?」

 紅茶を用意してくれた侍女のアリンがそう尋ねてくる。

「自分の好きなものを書き出してみようと思って」

「好きなもの、ですか?」

 アリンは不思議そうに首を傾げた。

「ええ。これからは自分のために生きようと決めたのだけれど、そもそも自分が何を好きなのか、よく分からないのよ」

「まあ、そうなのですか」

 彼女は私が幼い頃から専属侍女として仕えてくれている。私がどれほど家族の顔色をうかがってきたのか、誰よりも知っているのだ。

 だからこそ、私の行動に驚いたのだろう。

「とても素敵なことですわ、お嬢様」

「そうかしら?」

「はい。お嬢様はいつも誰かのために行動されていましたから。これからはご自分の時間を大切にすればよろしいかと思います」

 アリンは私のことをちゃんと見ていてくれたのだ。それがうれしくて胸が温かくなる。

「ありがとう、アリン。好きなものを探すのを手伝ってくれる?」

「もちろんでございます」

 私は頷くと、再び机に向かいペンを握る。

「ええと、好きなもの……」

 すぐに好きなものが思い浮かばず、しばらく考え込む。
< 11 / 19 >

この作品をシェア

pagetop