妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
「ねえ、アリン。この白い花の名前を知っている?」

「はい。確かスノードロップだったと思いますが……」

 スノードロップ。雪の雫か。可愛い名前でこの花にぴったりだ。

「私、この花が好きだわ」

 言葉に出してみて、自分でも驚いた。好きなものを見つけたのだ。

 たったそれだけのことなのに、胸がドキドキする。

「好きなものが増えましたね」

 アリンもうれしそうに微笑む。

 私はもう一度、スノードロップを見つめる。

 これから先、どれだけ好きなものを見つけることができるだろう。

 考えると、未来が楽しみになった。


 しかし、そんな穏やかな時間は長く続かなかった。

 夕食の席で父が私に報告をする。

「アリシア。明後日、アディントン伯爵家から使者が来ることになった」

「婚約解消の手続きについて、でしょうか?」

「そのとおりだ。正式な書類を持ってくるとのことだ」

 父が淡々と告げると、隣に座る母は当然という顔をしていた。

 私の隣に座るエイミーを横目でちらりと見れば、俯きがちではあるが口元に笑みを浮かべている。

「そうですか。承知いたしました」

「それから、お前にはしばらく社交の場を控えてもらおうと思っている」

「それは、どういうことでしょうか?」

 これから社交シーズンが始まるというのに、なぜ控えねばならないのだろう。
< 13 / 25 >

この作品をシェア

pagetop