妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 公爵閣下は黙って私の話を聞いてくれていたが、やがて静かに口を開いた。

「なるほど。では、私から君の価値を教えよう」

「え?」

 公爵閣下は懐から一枚の紙を取り出した。

「アリシア嬢、これに見覚えはあるか?」

 差し出された書類の内容を目で追った私は驚いた。

 それは、王宮の予算に関する報告書だ。

 書式も数字の配置にも見覚えがある。

 これは私が作成した書類だ。
「これはヴィクター・アディントンが提出したものだが、作成したのは君だな?」

 そのとおりではあったが、何と答えようか私は迷っていた。

 ここで私が作成したものだと公爵閣下に答えてしまうと、ヴィクターの功績が疑われてしまうと考えたからだ。

 王太子殿下の補佐官見習いとして、ヴィクターも最初は苦戦しながらでも頑張っていた。私はそんなヴィクターの助けになればと、資料の整理をしたり、数字を確認するといった些細な手伝いをしていたのだ。

 だが、次第に頼まれることが増えていった。

 気づけばヴィクターの仕事を全面的に手伝うのが当たり前になっていったのだ。

 彼が王太子殿下に褒められたと嬉しそうに話してくれる。それだけで十分だった。たとえヴィクターが私の作成したものを自分の成果としていても。
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