妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 それは婚約者だったからだ。でも、今は違う。

 だからと言って、今さら彼の仕事を手伝っていたことを話してもいいのだろうか?

「……その書類は」

 そこまで口にして私は言葉を止めたが、公爵閣下は続きを促すことなく、黙って私を見つめている。

「いや。無理に答えなくともよい。だが、この書類を君が作成したものだということはすでに調べがついている」

「え……?」

 公爵閣下は手にした書類へ視線を落とした。

「ヴィクター・アディントンの報告書の質がある時期から変わった。内容がよく整理されていて、数字の分析も的確になった。以前の彼とは比べものにならないくらいにだ。何があったのか、調べてほしいと王太子殿下に頼まれたのだ」

 王太子殿下が公爵閣下に?

 そういえば、王太子殿下と公爵閣下は親しいと聞いたことがある。

「そうして調べていくうちに君に辿り着いたというわけだ。これは君が作成したものだろう?」

 決して責めるようなわけではないが、逃げ道を塞ぐような問いかけに、私はもうごまかしは効かないと悟る。

「……はい」

 私は小さく頷いた。

「私が作成しました。でも、アディントン伯爵令息のお仕事を少しお手伝いしただけです」

「少しか」

 公爵閣下はわずかに眉を上げた。
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