妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~

6.まずは一歩

 公爵閣下がお帰りになられた後も私はしばらく図書室にいた。

 求婚の返事は急がないと言っていたが、あまりお待たせするのも良くないので、真剣に考えてみることにしたのだ。

「どうしようかしら?」

 今日話をしてみた限り、噂どおりの冷酷な人物には思えなかった。あまり領地から出てこない方だから、想像が一人歩きしたのではないか?

 本当はどんな方なのか、彼の人となりをもう少し知りたいと思ってしまった。

「お返事をする前にもう一度お話してみたいわ」

 ふと、机に置いた本が目に入る。公爵閣下に勧められた旅行記だ。

 本を手に取り、パラパラとめくれば異国情緒にあふれた街並みのイラストが描かれている。

「面白そう」

 もしかすると、この旅行記の中に好きだと思えるものが見つかるかもしれない。

 そう思って本を開いた時に図書室の向こうからアリンの声がする。

「お嬢様、よろしいでしょうか?」

「構わないわ。入ってきて、アリン」

 アリンが戸惑いがちに入室してきた。

「ヴィクター・アディントン伯爵令息がいらっしゃっております」

「エイミーに会いに来たのではないの?」

「いいえ。お嬢様に御用がおありのようです」

「え?」

 思わず本を落としそうになる。

 エイミーに会いに来たというのであれば分かる。今までだって先触れもなく訪れてきたかと思えば、私ではなくエイミーのもとを訪れていたのだから。

 それなのに、婚約を解消した私に何の用があって来たのかしら?

 もしかして……。

「応接室でお待ちいただいておりますが、お会いになられますか?」

「……ええ。お会いするわ」

 支度にたっぷりと時間をかけて、私は応接室へと向かった。
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