妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 胸が痛まないわけではないが、私はもう彼の望む答えを返すのはやめると決めていた。

「……アリシア。君は以前と比べると変わってしまったな」

 やっとヴィクターが声を絞り出すようにそう言ったので、私は静かに微笑んだ。

「変わったのではなく、変わろうとしているのですよ」

 今までずっと思うように生きれなかった自分のために。

「本日はわざわざお越しいただきありがとうございました。お仕事が無事に進むことをお祈りしております」

 私は立ち上がり、丁寧にカーテシーをした。

 ヴィクターは何か言いたげだったけれど、結局、何も言わずに立ち上がり、応接室を出ていく。

 扉が閉まる音を聞いてから、ようやく息を吐いた。

「……断ることができた」

 たったそれだけのことなのに、心臓が高鳴っている。

 だが、後悔はなかった。

 私はじっと手を見る。

 これからはこの手で自分の人生を形作っていくことができるだろうか?

 まだ、答えは分からない。

「まずは一歩を出せたわ」

 私は小さく呟いた。

 そして、旅行記を読むために図書室へ戻ることにした。
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