妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 そうだ。私は婚約を解消したことを恥じてはいない。

 誰かの期待に応えるためだけに生きるのをやめて、自分の人生を歩み始めたのだ。

 その決心を他人の噂で揺らがせたくはなかった。

 公爵閣下とともに挨拶に回っていると、聞き覚えのある声がした。

「アリシア?」

 声のしたほうへ向くと、そこにはヴィクターとエイミーが立っていた。

 ヴィクターは私と公爵閣下の姿を見て、明らかに動揺している。

「エーデルシュタイン公爵閣下。ご機嫌麗しゅうございます」

「アディントン伯爵令息か」

 公爵閣下はヴィクターのあいさつに淡々と応じた。

 ヴィクターの隣でエイミーは私のドレスをじっと見つめていた。今まで着たことがないデザインだから物珍しいのだろう。

「お姉様……本当にエーデルシュタイン公爵閣下といらしたのね?」

「ええ、先日お話したとおりよ」

「それは、そうですけれど……」

 エイミーは言葉を濁しながら、私をエスコートする公爵閣下に目を留める。

「どうして、お姉様なのですか?」

 思いがけない問いかけに私は目を瞬かせた。

「エイミー?」

「だって、エーデルシュタイン公爵閣下ほどのお方でしたら、もっと相応しい女性がたくさんいらっしゃるでしょう? それなのに、どうして婚約解消したばかりのお姉様を……」

「エイミー、よせ!」

 ヴィクターが窘めたが、エイミーは不満そうに唇を尖らせた。
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