妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
「君がアリシア嬢の妹エイミー嬢か? アリシア嬢が誰と婚約していたかは関係ない。私が彼女をエスコートしたいと思ったのだ。それでは不都合だろうか?」

 公爵閣下は落ち着いた声でそう答えていたが、その瞳には冷たさが宿っていた。その冷酷な瞳に真っ直ぐに見つめられたエイミーはビクリと身を震わせる。

「い、いえ……」

 震える声でエイミーは頷いた。

「エーデルシュタイン公爵閣下、アリシア、失礼した。行こう、エイミー」

 ぶるぶると震えているエイミーの肩を抱いて、ヴィクターはその場から去っていった。

「あの……公爵閣下。妹が失礼なことを……」

 エイミーの無礼を謝罪しようとして、公爵閣下が私の口元に人差し指を立てる。

「君が謝罪する必要はあるまい」

「あっ……」

 これまで妹がしでかした失敗は私が謝罪してきた。長年沁みついた癖というものはなかなか抜けないものだ。

 少ししゅんとしていると、公爵閣下が苦笑しながら手を差し出す。

「それよりアリシア嬢。私と一曲踊っていただけるだろうか?」

「……はい。喜んで」

 差し出された手に私は自分の手を重ねた。

 楽団が奏でる音楽がゆったりしたワルツへと変わる。

 公爵閣下に導かれ、広間の中央へと歩き出した。

「アリシア嬢。そろそろ私のことはアルベールと呼んでくれないだろうか?」

 ダンスを踊りながら公爵閣下にそう囁かれたので、私は微笑む。

「……はい。アルベール様」

 もう、周囲の視線は気にならない。

 私の隣にはアルベール様がいる。彼の手を取りながら、私は初めて自分の未来に心を躍らせていた。
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