妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 冷酷と言われているアルベール様が、照れながらそんなことを言うので、おかしくなってしまったのだ。

「アルベール様、そういう時は断りなどいらないのですよ」

「そうか」

 そして優しくアルベール様は私を包み込む。彼の懐はとても温かい。

 両親に抱いてもらったことは記憶の中ではない。

 ヴィクターも私を抱きしめたことがない。

 だから人に抱きしめられるのが、こんなに温かいものだとは知らなかった。

「耳が赤くなっているな」

「アルベール様のせいです!」

「それは光栄だ」

 楽しそうにアルベール様が笑うので、私は頬をぷうと膨らませる。

 夜空には変わらず月が輝いていた。

 今夜、私は一つの答えを選んだ。

 誰かのためではなく、私自身の意思で……。

 そしてきっとこの先も選んでいくのだろう。

 自分が好きだと思えるものを。自分が歩みたいと思える道を。

 大切な人とともに生きる未来を。

 ――私の新しい人生は、今始まったばかりだった。
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