妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
「お母様。アルベール様は私を選んでくださったのです。私はそのお気持ちに応えたいのです」

「……アリシア」

「もちろん、結婚は私一人で決められることではありません。両家で相談しなければならないこともあるでしょう。ですが、私の気持ちは変わりません」

 母は諦めたようにため息を吐いた。

「お父様。私はアルベール様と結婚したいです」

 父はしばらく黙っていたが、ふと机の書状に目を落とす。

「……お前がそこまで決めているのであれば、私が反対する理由はない。我が家としても、エーデルシュタイン公爵家と縁を結べるのであれば願ったりだ」

「お父様」

「ただし、正式な婚約を結ぶ前に条件については双方で確認する必要がある。エーデルシュタイン公爵家との話し合いは私が責任を持って進めよう」

「ありがとうございます」

 私の選択を認めてくれた父に深く頭を下げた。

 かつて私は両親に認めてもらうことをずっと望んでいた。だが、今は両親が認めてくれるかどうかだけで、自分の価値を決めることはない。

 私には私の人生がある。

 そのことをようやく理解できたのだ。いや。理解し始めたと言ったほうが正しいのだろうか。

「お姉様は……本当に変わったのね」

 エイミーは私を見つめていたが、その表情からは何を考えているのか読み取れなかった。

「そうかしら?」

「だって、以前のお姉様なら……」

 自分の意見を言うことはなかったのに? 

 従順な姉でいることが、エイミーは当然だと思っていたのだろう。

「エイミー。私はこれから自分のことを大切にしたいと思っているの」

 彼女は何も言わず、ふいと背を向けて応接室を出て行った。
< 48 / 55 >

この作品をシェア

pagetop