妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 ヴィクターへ恋をしていたかと問われれば、確かに私は彼を慕っていたと思う。だが、それは本当に恋だったのか今となっては、もう分からない。

「ええ。そうでしょうね」

 母の目は私には向けられていない。頷きながらも、その目はエイミーに向けられていた。

「でも、貴女は姉でしょう?」

 幾度となく繰り返されてきた言葉。

「妹が幸せになれるのであれば、我慢できるでしょう?」

 私の幸せは? そう問うたところで無駄なのは分かっている。

 だから、黙っていた。

 母はそれを肯定と受け取ったらしい。

「そうよね。貴女は昔から聞き分けのいい子だったもの」

 父も満足そうに頷いた。

「アリシアは分かってくれると思っていた。アディントン伯爵家には、こちらから婚約解消の手続きを進めると伝えておこう」

 もう全てが決まったかのようだった。私の意思など最初から必要なかったのだ。

 爪が食い込むほどさらにきつく手を握ると、エイミーがおずおずと私の手に触れる。

「お姉様、怒っているの?」

 エイミーに視線を向けると、瞳は涙に濡れており、唇は小さく震えていた。

 幼い頃から数えきれないほど見てきた表情だ。

 この顔をされると、私は何も言えなくなる。
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