妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~
 私も思わず見入っていると、ある一画に目がいく。白くて小さな花が揺れている。あれはスノードロップだ。

「ここにも咲いているのね」

 小さく呟きスノードロップを見つめていると、馬車が玄関前で停車した。

 私たち家族が馬車から降り立つと、屋敷の使用人たちが整然と並んで出迎えてくれる。

「お待ち申し上げておりました。ようこそ、エーデルシュタイン公爵家へ」

 家令と思われる壮年の男性が頭を下げた。

「アルベール様がお待ちでございます。どうぞこちらへ」

 案内されて玄関ホールへ足を踏み入れる。内装は決して華美ではなく上品で落ち着いた感じだ。

「アリシア、来てくれたのだな」

 階段の上から聞き慣れた声がする。声の主は待ちきれない様子で階段を下りてきた。

「アルベール様」

 今日は正装ではないが、上品な濃紺の装いだ。正装のアルベール様も素敵だが、こちらはどこか親しみやすい雰囲気がある。

 アルベール様がわずかに目元を和らげたので、私も微笑む。

「クロスフォード侯爵、侯爵夫人。本日はお越しいただき感謝する」

 父のほうへ向くと、アルベール様は一礼する。

「こちらこそ、お招きいただき感謝いたします」

 年下とはいえアルベール様は格上の公爵なので、父もふさわしい礼を返す。
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