トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜
「ロングが一番、維持が難しい」
念を押すようにリアムが言う。
「分かってるよ、それぐらい」
「なら聞くけど、その切れ毛が目立つ髪に満足してるのか?」
今度は鏡越しに問われる。
そして隠すことなくリアムの顔が不満そうに歪んだ。
「ダイヤモンドも磨かなければただの石だ。見つけてもらえなければ価値すらつかない」
その言葉は、髪だけでなく今や副業以下となりかけている創作活動まで指摘された気がした。
ーー私だって、努力はしてる。ただ、いつも上手くいかないだけ。
リアムは鋏など持っていないのに、しかし今、リアムによって毛先だけでなく心にまで鋏を突きつけられている気がした。
葵はうまく自分の感情を表現する言葉が見つからず黙り込み、フロアに重い沈黙が落ちる。
しかし直後、ジオの穏やかな明るい声が響いた。
「リアム!買ってきたぞ」
振り返ると大量の紙袋を両腕に下げたジオが居て、視線が合えば優しい笑みを返される。
『まったく人使いが荒いよ、君は』
『僕が知るなかでお前が一番僕の趣味に合うんだ。適任者に全て任せる方が信頼出来る』
『はは。まぁ、褒められるのは悪くない。ひと通り揃えたが葵の好みも尊重するんだぞ?』
言いながらジオはブランドのロゴが入った紙袋を次々とテーブルに置いてゆく。
リアムは中を除いてクリームベージュのレースワンピースや夜空のようなドレスなど手に中身を確認しては、チラリと視線を葵へ流す。
それから機嫌良く言った。
「アビー、髪を整えてメイクと服も君に似合うものに変えよう。気分も上がるぞ」
喜色を孕んで告げるリアムに、葵は呟いた。
「まるでミスコンに潜入命令された警官みたい……」
ふと大改造される映画のヒロインを思い出しては、自分に突然降りかかった大掛かりなイメチェン計画を重ねた。
「爆弾を探せとは言ってないよ。僕が見つけて欲しいのは君自身の魅力だ」
リアムは言葉で遊びながらも、しかし努めて真剣に言う。
吸い込まれそうな碧い瞳が、訴えかけてくるのだ。
葵は見ていられず鏡越しの視線から逃げるように逸らした。
するとリアムは片手を上げ、ジオを皮切りにフロアに居た人間が部屋を移動していった。
どうやら二人きりにしてくれたらしい。
「君は美しい。もっとアピールするべきだ」
リアムは葵の背後に立ち、髪に触れながら言った。
そんな風に言われると、聞くつもりのなかった「なぜ」という疑問がカタカタと蓋を揺らす。
「こんなこと、……そもそも私になんで構うの?こだわる理由がよく分からないんだけど……」
困惑と卑屈。
――リアムが自分を覚えていたことは嬉しかったけど、きっと傷つくだけだ。
リアムのことはちょうどいい距離から眺め、夢は力を蓄えながら自力で追いかける。
その方が葵の身の丈にあっている。
このまま流されてリアムの思惑通り契約妻に収まってしまう事なんて出来ない。
そんな戒めを心に刻む葵に対し、リアムは静かに言った。
「ライブペイントだ」
念を押すようにリアムが言う。
「分かってるよ、それぐらい」
「なら聞くけど、その切れ毛が目立つ髪に満足してるのか?」
今度は鏡越しに問われる。
そして隠すことなくリアムの顔が不満そうに歪んだ。
「ダイヤモンドも磨かなければただの石だ。見つけてもらえなければ価値すらつかない」
その言葉は、髪だけでなく今や副業以下となりかけている創作活動まで指摘された気がした。
ーー私だって、努力はしてる。ただ、いつも上手くいかないだけ。
リアムは鋏など持っていないのに、しかし今、リアムによって毛先だけでなく心にまで鋏を突きつけられている気がした。
葵はうまく自分の感情を表現する言葉が見つからず黙り込み、フロアに重い沈黙が落ちる。
しかし直後、ジオの穏やかな明るい声が響いた。
「リアム!買ってきたぞ」
振り返ると大量の紙袋を両腕に下げたジオが居て、視線が合えば優しい笑みを返される。
『まったく人使いが荒いよ、君は』
『僕が知るなかでお前が一番僕の趣味に合うんだ。適任者に全て任せる方が信頼出来る』
『はは。まぁ、褒められるのは悪くない。ひと通り揃えたが葵の好みも尊重するんだぞ?』
言いながらジオはブランドのロゴが入った紙袋を次々とテーブルに置いてゆく。
リアムは中を除いてクリームベージュのレースワンピースや夜空のようなドレスなど手に中身を確認しては、チラリと視線を葵へ流す。
それから機嫌良く言った。
「アビー、髪を整えてメイクと服も君に似合うものに変えよう。気分も上がるぞ」
喜色を孕んで告げるリアムに、葵は呟いた。
「まるでミスコンに潜入命令された警官みたい……」
ふと大改造される映画のヒロインを思い出しては、自分に突然降りかかった大掛かりなイメチェン計画を重ねた。
「爆弾を探せとは言ってないよ。僕が見つけて欲しいのは君自身の魅力だ」
リアムは言葉で遊びながらも、しかし努めて真剣に言う。
吸い込まれそうな碧い瞳が、訴えかけてくるのだ。
葵は見ていられず鏡越しの視線から逃げるように逸らした。
するとリアムは片手を上げ、ジオを皮切りにフロアに居た人間が部屋を移動していった。
どうやら二人きりにしてくれたらしい。
「君は美しい。もっとアピールするべきだ」
リアムは葵の背後に立ち、髪に触れながら言った。
そんな風に言われると、聞くつもりのなかった「なぜ」という疑問がカタカタと蓋を揺らす。
「こんなこと、……そもそも私になんで構うの?こだわる理由がよく分からないんだけど……」
困惑と卑屈。
――リアムが自分を覚えていたことは嬉しかったけど、きっと傷つくだけだ。
リアムのことはちょうどいい距離から眺め、夢は力を蓄えながら自力で追いかける。
その方が葵の身の丈にあっている。
このまま流されてリアムの思惑通り契約妻に収まってしまう事なんて出来ない。
そんな戒めを心に刻む葵に対し、リアムは静かに言った。
「ライブペイントだ」