トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜
――――男とは現金な生き物で、リアムはあっさりその日の予定を変更して、しばらくサンタフェに留まることを決めた。

リズにはアレックスが帰国するまでやっぱりサンタフェで待つと伝え、それまでの暇つぶしと称してアビーに会いに行く。

たった一週間だったが、あのライブペイントの後では距離を縮めるのは容易かった。

アビー自身もアートマーケットの経験によって、同伴していたリアムとリズに共同意識が働いたのだろう。
もうリアムの前で林檎のように赤くなることはなかった。

そして、埋もれそうな才能の原石という第一印象を払拭するような朗らかさと余裕が生まれていた。

どんな人間か確かめようと自分の生家について明かしたが、アビーの反応は「そうなんだ」程度で、邪な感情を抱かれることはなかった。
あれこれと詮索することなく、目の前のリアム自身を見ているといった具合だ。

話題はアートが中心で、アビーは日本に留まらず世界で活動できるようなアーティストになりたいのだと夢を語る。

彼女曰く、このホームステイは度胸試しであり、日本で培った英語を現地で使ってみたかったからだという。

――Still waters run deep. きっと彼女の心の奥は深いのだろう。


その魅力に抗えるほどリアムは禁欲的でもなければ奥手でもない。
アビーが帰国する前日、リズの居ない隙を見計らってカーポートでキスを仕掛けた。

無理矢理ではない。

帰国が迫り、少ししんみりした空気を纏った彼女を見て行動に移したのだ。

アビーは一瞬驚いた表情を浮かべたが、しかしリアムの唇を追いかけ応えてくれた。

惹かれているなどとはわざわざ言葉にして伝えなかったが、これからの時間がアビーの恋愛感情を育て、きっとそのうち自分に愛を伝えてくるに違いない。

いつだってリアムは言葉を誘い出す側だ。

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