トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜

⑥シンデレラは結構です

「だから、こんなこと迷惑だし、結婚だって無理だからね」

葵は溜息を零し、リアムを鏡越しに見つめていた。

「なぜ?普通は喜ぶところだろ?」

美容チームなどと専任チームを揃えられ、ブランド物の服を用意され、確かに表面だけなぞれば、ティーン向けサクセスロマンスのヒロインだ。

イケてないない女の子が蝶のように羽ばたくのはド定番中のド定番。

それが定石となるのは誰もがシンデレラストーリーを憧れるからで、リアムがそこに葵を当てはめようとしてきたのも突飛な考えではない。

ただし、その行動はきっとリアム自身のため。

「いや、だって……住む世界が違いすぎるし、私はリアムに釣り合わないって」
「おかしなことを言うな」

リアムは少し顎先を傾けて不満気に眉間に皺を刻んだ。

「世界で活躍するアーティストになるんだろ?そのために語学も学んでいたんじゃないか。僕の妻になれば君の名前も一気に売れる。夢が現実になるんだぞ」

かつて自分が話した夢を、リアムは引き合いに出してきた。

しかし葵は、煌びやかな世界に憧れて、世界に通用するアーティストになりたいわけではない。

「……あのね、リアム」

「私は、他人を利用して有名になりたいんじゃなくて、純粋に私の作品を好きって言って欲しいだけ。実績を伴わない結果なんて恥ずかしいだけだよ」

国を問わず、そんな風に活動出来れば良いと思った。
様々なアートに触れて、自分を表現していきたい。

言葉よりも、葵が葵らしくあるには絵が必要だったから。

しかしリアムはそれを分かっていない。

さらに彼は言った。

「……他人の力を借りて声を上げることの何がいけないんだ?」
「え……」

「言ったはずだ。埋もれたまま見つからないダイアモンドには、価値すらつかないと。今の君はまさにそれだよ。だから僕が価値を証明する。結婚しよう、アビー」

リアムはまるで結婚の最高の条件だと言わんばかりに告げる。

しかも相変わらず、「結婚してくれ」じゃなくて「結婚しよう」なのがリアムらしい。

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