トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜
⑧契約妻という選択
デザインフェスの一日目を終えた夜、自宅に戻った葵はワンピースを広げ見つめていた。
――彼は信託金の受け取り条件を満たすために、結婚したいだけなのに。
しかし昨日のリアムは一度も葵に結婚しようとは言わず、モデルに徹していた。
彼自身が自分を描けと言い出したことだが、よくもあれだけの時間を費やせたものだ。
しかも汚れたら目立ちそうなスーツを着て。
リアムは葵の気持ちを置いてけぼりにするくせに、しかし確実に心を揺らしてくる。
まるで自分を見ろと言わんばかりで強引だ。
そして、彼の術中にハマってしまっている自分が居るのが酷くもどかしかった。
なにせ会場では迷惑だとリアムに告げたものの、会えればやはり嬉しいのだ。
リアムを目の前にして、その姿を描いて、身体の奥深くから熱が湧き上がってきた。
あれは、十一年前のアートマーケットで生まれた情熱と同じものだった気がする。
「明日は、着てみようかな……」
サンタフェの夏をもう一度取り戻したいのは葵も同じだ。
失敗が続いて、傷つくのを恐れ動けなくなり、沈んでゆくのを感じていた葵にとって、あの再会は様々な感情を鮮明に目覚めさせた。
それが衝動となって突き動かしてくる。
――この興奮のまま描くことが出来るなら……。
きっともう一度、飛び出せる気がする。
――彼は信託金の受け取り条件を満たすために、結婚したいだけなのに。
しかし昨日のリアムは一度も葵に結婚しようとは言わず、モデルに徹していた。
彼自身が自分を描けと言い出したことだが、よくもあれだけの時間を費やせたものだ。
しかも汚れたら目立ちそうなスーツを着て。
リアムは葵の気持ちを置いてけぼりにするくせに、しかし確実に心を揺らしてくる。
まるで自分を見ろと言わんばかりで強引だ。
そして、彼の術中にハマってしまっている自分が居るのが酷くもどかしかった。
なにせ会場では迷惑だとリアムに告げたものの、会えればやはり嬉しいのだ。
リアムを目の前にして、その姿を描いて、身体の奥深くから熱が湧き上がってきた。
あれは、十一年前のアートマーケットで生まれた情熱と同じものだった気がする。
「明日は、着てみようかな……」
サンタフェの夏をもう一度取り戻したいのは葵も同じだ。
失敗が続いて、傷つくのを恐れ動けなくなり、沈んでゆくのを感じていた葵にとって、あの再会は様々な感情を鮮明に目覚めさせた。
それが衝動となって突き動かしてくる。
――この興奮のまま描くことが出来るなら……。
きっともう一度、飛び出せる気がする。