トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜
②信託金目当ての呆れた求婚
「受け取ってくれ。君のために用意した」
後退った葵だったが、即座に間合いを詰められ再び薔薇が視界を塞ぐ。
「え……あ、ちょっと、これ……」
無意識に受け取ってしまった花束は、見ための何倍もずしりと重たかった。
リアムがサプライズ好きであることは知っていたが、これはあまりいい冗談じゃない。
「……なんで日本に、というか渡す相手間違ってない?」
どんな反応を求めているのか懐疑的な視線を送り花束を突き返せば、リアムは随分と高い位置から葵を見降ろし口角を緩慢と持ち上げる。
「来日したのはロングアイランドに君を連れ帰るためだ。次の休みにでもアビーの両親のところへ挨拶に行きたい。細かい話はホテルでしよう。これは一旦預かるから、ひとまず車に乗ってくれ」
既に結婚が決定事項かの如く流暢に喋り出すリアムは、葵が突き返した花束をその意味ごと取り上げ肩を優雅に抱き寄せた。
あまりに自然で、違和感のない所作。
リアムは、彼の性格も相まって”全てがそうなって当然”のような空気感を作ってしまう。
それこそ、何が起きているかの理解が追い付かない葵を車の前まで誘ってしまうほどに。
しかしふと上機嫌なリアムの横顔を見て我に返り立ち止まった。
危ない、またあの時と同じだ。
「いや……おかしいでしょう。なんでそうなるの」
「道端じゃ迷惑だろう?」
「そういうことじゃなくて」
「変だな。薔薇の本数が足りなかったか」
葵が指摘していることが、どうやらリアムには伝わっていない。
「だから私に渡すものじゃないでしょって話で……」
どこか噛み合わない押し問答が続くも、しかしリアムは車に向かって声を掛けた。
「ジオ!花束を車に乗せてくれ」
するとハザードランプが点灯している車の運転席から一人の男性が降りてくる。
「ニージマさん、お久しぶりです」
「あなたは……」
降りてきたのは、一時期アロハシャツで毎日買い物に来ていたアロハシャツの紳士だった。
今はスーツ姿だがちゃんと見覚えがある。
「あの時は失礼しました。ジオ・ブルームと申します。リアムのマネージャーをしています」
「……っ」
あの時とは、恋人の有無を聞かれた時だろうか。
まさかリアムのために確認しに来ていただなんて言わないで欲しい。
葵が眼を白黒させていると、ジオはリアムを見遣り英語で尋ねた。
『ほらな、リアム。やはり驚かせてしまってる。一度に色々と言うのは彼女に負担じゃないか?』
『ハッ。日を改めろと言いたいのか?止めてくれ。契約はスピードが重要だ。結婚も同じだろ』
目の前で交わされるネイティブの会話をなんとか拾った葵は、店で紳士的だったジオの態度が変わらないことに安堵しつつも、リアムの不遜な物言いに眉根を寄せる。
しかしそんな葵の様子など気にも留めず、リアムは振り返る。
「行くぞ、アビー」
「……結婚って本気?驚かせるためじゃなくて?」
「本気だよ。なにせ僕には時間がないからな」
「時間がないってどういうこと……?」
「詳しくはホテルで話す。さぁ乗ってくれ、僕のダイヤモンド」
後退った葵だったが、即座に間合いを詰められ再び薔薇が視界を塞ぐ。
「え……あ、ちょっと、これ……」
無意識に受け取ってしまった花束は、見ための何倍もずしりと重たかった。
リアムがサプライズ好きであることは知っていたが、これはあまりいい冗談じゃない。
「……なんで日本に、というか渡す相手間違ってない?」
どんな反応を求めているのか懐疑的な視線を送り花束を突き返せば、リアムは随分と高い位置から葵を見降ろし口角を緩慢と持ち上げる。
「来日したのはロングアイランドに君を連れ帰るためだ。次の休みにでもアビーの両親のところへ挨拶に行きたい。細かい話はホテルでしよう。これは一旦預かるから、ひとまず車に乗ってくれ」
既に結婚が決定事項かの如く流暢に喋り出すリアムは、葵が突き返した花束をその意味ごと取り上げ肩を優雅に抱き寄せた。
あまりに自然で、違和感のない所作。
リアムは、彼の性格も相まって”全てがそうなって当然”のような空気感を作ってしまう。
それこそ、何が起きているかの理解が追い付かない葵を車の前まで誘ってしまうほどに。
しかしふと上機嫌なリアムの横顔を見て我に返り立ち止まった。
危ない、またあの時と同じだ。
「いや……おかしいでしょう。なんでそうなるの」
「道端じゃ迷惑だろう?」
「そういうことじゃなくて」
「変だな。薔薇の本数が足りなかったか」
葵が指摘していることが、どうやらリアムには伝わっていない。
「だから私に渡すものじゃないでしょって話で……」
どこか噛み合わない押し問答が続くも、しかしリアムは車に向かって声を掛けた。
「ジオ!花束を車に乗せてくれ」
するとハザードランプが点灯している車の運転席から一人の男性が降りてくる。
「ニージマさん、お久しぶりです」
「あなたは……」
降りてきたのは、一時期アロハシャツで毎日買い物に来ていたアロハシャツの紳士だった。
今はスーツ姿だがちゃんと見覚えがある。
「あの時は失礼しました。ジオ・ブルームと申します。リアムのマネージャーをしています」
「……っ」
あの時とは、恋人の有無を聞かれた時だろうか。
まさかリアムのために確認しに来ていただなんて言わないで欲しい。
葵が眼を白黒させていると、ジオはリアムを見遣り英語で尋ねた。
『ほらな、リアム。やはり驚かせてしまってる。一度に色々と言うのは彼女に負担じゃないか?』
『ハッ。日を改めろと言いたいのか?止めてくれ。契約はスピードが重要だ。結婚も同じだろ』
目の前で交わされるネイティブの会話をなんとか拾った葵は、店で紳士的だったジオの態度が変わらないことに安堵しつつも、リアムの不遜な物言いに眉根を寄せる。
しかしそんな葵の様子など気にも留めず、リアムは振り返る。
「行くぞ、アビー」
「……結婚って本気?驚かせるためじゃなくて?」
「本気だよ。なにせ僕には時間がないからな」
「時間がないってどういうこと……?」
「詳しくはホテルで話す。さぁ乗ってくれ、僕のダイヤモンド」