トラスト・ファンド・ベイビー 〜信託金目当てだったはずの金髪碧眼な資産家俳優に、私の絵ごと狙われています〜
冷たい顔をしており、贅肉が全て削ぎ落とされたような尖った輪郭が特徴で、片脚が不自由なのか杖をついて引き摺りながら歩み寄る。

『リアム。着いたらすぐに私の所へ来るよう言ったはずだ。何してる?』

『……彼があなたのお祖父さん?』

葵が問うと、リアムは静かに頷いた。

それから心底疎ましそうに見遣ると、『彼女をひとりにしたくなかったんです』と告げる。

『お前の都合ばかり優先されては困る』

『何度も言ったはずです。あんたの紹介する女とは会わない。それに条件はこの通り、満たす手筈が整いました』

リアムは徐に葵の肩を抱き寄せ眉を顰めた。

――女性を紹介?相続問題だけじゃなかったの?

葵はリアムから出された情報を鵜呑みにしていたことに心が揺れた。

リアムには隠し事があるのかもしれない。
するとリアムの祖父は視線を眇め溜息を溢した。

『……今は見合いの話などしてないだろう。リアム、私の書斎に来なさい』

『でもアオイが……』

『その娘と結婚する気なら、来いと言ってる』

冷ややかな声が鋭く葵達を刺した。

『リアム。いいから、行って』

葵は渋るリアムの腕を引き訴えた。

するとようやく葵の肩を手放す。
それから重い一歩を踏み出し祖父の元へとゆき身体を支えた。

『すぐ戻る。もし僕と似た顔の男が話しかけてきても無視してくれ』

その声は、いつもの自信に満ちた音とは異なり、少しだけ強張っている。

『うん……』

葵はぎこちなく頷いた。
よっぽど嫌いな相手なのだろうか。

一方でリアムの祖父にも葵は唐突に呼びかけられた。

『ミス・アオイ』
『はい』

思わず背筋が伸びるような響きに、直立して言葉を待っているとふっと笑われた。

笑い方はリアムそっくりだ。

『こいつは私が用意した見合いから散々逃げ回り続けた。娘はリアムに甘いから好きにさせていたが……プライドの高いリアムのことだ。信託金の条件を出せば観念するかと思えば……驚いたよ。実在したんだな、君は』

『え……?』

その口振りに違和感を覚えたが、リアムの祖父が踵を返して動き出してしまったために、物言いたげなリアムもその場を立ち去ってゆく。

――リアムが逃げてた?実在したって、どういう意味。
< 32 / 34 >

この作品をシェア

pagetop