大正初恋浪漫譚ー軍人少尉と婚約は突然にー
律とは、小学生の頃からの付き合いだった。
近所に住んでいた二人は、幼い頃から何をするにも一緒だった。
遊びに出かけては喧嘩をし、帰り道にはまた何事もなかったように並んで歩く。
気づけば、それが当たり前の日常になっていた。
だから、小春は律の前で取り繕う必要がない。
思ったことは遠慮なく口にするし、腹が立てば怒る。
律もまた、そんな小春を面白がっては、わざとからかうのだった。
「ところで、今日はどこへ行くんだ?」
歩き始めてしばらくすると、律が尋ねた。
「…少尉のお宅よ。今日は裁縫を教えていただくの」
「へえ。花嫁修業ってやつか」
「そうよ。悪い?」
「いやいや。小春が針仕事ねえ……」
律は意味ありげに小春の顔を眺めた。
「何よ、その顔は」
「いや、針で指を刺して、癇癪を起こしてるところが目に浮かんだだけだ」
「失礼ね! 私、そんなこといたしません!」
「おやおや、急にお嬢様らしくなっちゃって」
「律!」
小春が声を尖らせると、律は悪びれもせずに笑った。