大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
幼い頃から、ずっとそばにいた。
いつだって、声をかければ振り向いてくれた。
何を言っても、どれだけからかっても、明日になればまた、いつものように隣で笑ってくれる。
そんな日々が、これからも続いていくのだと思っていた。
けれど、小春には小春の未来がある。
そして、その未来の隣に立つのは、自分ではない男なのかもしれない。
「……遅いんだよな、俺は」
ぽつりと呟いた声は、夏の風に紛れて消えた。
今さら、何をどうすればいいのかもわからない。
ただひとつ、確かなことがある。
小春が幸せになることを願っている。
それは、嘘ではなかった。
けれど――その幸せの隣に自分がいられたならと、願わずにはいられないのも、また本当だった。