大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー


*


翌朝、父から告げられたのは、思いもよらぬことであった。


「今日の午後、葛城少尉が屋敷に来ることになっている」


朝餉の席で、父は何でもないことのようにそう言った。

私は箸を持つ手を止めた。


「……少尉が、いらっしゃるのですか?」

「ああ。お前にも、改めて挨拶をしてもらおうと思ってな」


改めて。

その言葉の意味を考え、私は思わず兄の顔を見た。

兄は涼しい顔で味噌汁を口に運んでいる。

どうやら、兄にとっては初めから決まっていた話らしい。


「お兄様、ご存じだったの?」

「何がだ」

「今日、あの方がいらっしゃることです」

「父上から聞いていたが」

「どうして教えてくださらなかったの!」

「今、知ったのだからよいではないか」


兄はそう言って、悪びれもせずに箸を進めた。

私は思わず唇を尖らせた。


まったく、男の人というものは、どうしてこうも大事なことを平然と決めてしまうのだろう。

……もっとも、兄に言わせれば、私のほうが大袈裟なのかもしれないけれど。

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