大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
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翌朝、父から告げられたのは、思いもよらぬことであった。
「今日の午後、葛城少尉が屋敷に来ることになっている」
朝餉の席で、父は何でもないことのようにそう言った。
私は箸を持つ手を止めた。
「……少尉が、いらっしゃるのですか?」
「ああ。お前にも、改めて挨拶をしてもらおうと思ってな」
改めて。
その言葉の意味を考え、私は思わず兄の顔を見た。
兄は涼しい顔で味噌汁を口に運んでいる。
どうやら、兄にとっては初めから決まっていた話らしい。
「お兄様、ご存じだったの?」
「何がだ」
「今日、あの方がいらっしゃることです」
「父上から聞いていたが」
「どうして教えてくださらなかったの!」
「今、知ったのだからよいではないか」
兄はそう言って、悪びれもせずに箸を進めた。
私は思わず唇を尖らせた。
まったく、男の人というものは、どうしてこうも大事なことを平然と決めてしまうのだろう。
……もっとも、兄に言わせれば、私のほうが大袈裟なのかもしれないけれど。