大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
私は膝の上の手を見つめた。
少尉の穏やかな眼差しが、ふと脳裏に浮かぶ。
あの方は、私をどう思っていらっしゃるのだろう。
私との結婚を、望んでいらっしゃるのだろうか。
それとも、あの方もまた、家のためにこの縁談を受け入れているだけなのだろうか。
「……もう少し、お話ししてみます」
小さく答えると、兄は安心したように微笑んだ。
「それでいい」
窓の外では、春の風が桜の枝を揺らしていた。