大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
私は寝台から起き上がり、鏡台の前に腰を下ろした。
「……もっと、お話ししてみないとわからないわよね」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
好きになれるかどうかは、まだわからない。
けれど、あの方を知らないまま、嫌だと決めつけるのも違う気がした。
昨夜、兄が言った言葉を思い出す。
――今すぐ好きになれとは言わない。ただ、あいつを知る前から、嫌わないでやってくれ。
私は鏡の中の自分を見つめた。
「……知るくらいなら、いいわよね」
そう口にすると、ほんの少しだけ、胸のつかえが取れた気がした。