大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
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「ええっ!? 小春、縁談が決まったの!?」
翌日の昼休み。
女学校の中庭で、私の話を聞いた麻友子は、目を丸くして声を上げた。
「ちょ、ちょっと、声が大きいわよ!」
慌てて周囲を見回すと、麻友子は「あら、ごめんなさい」と口元を押さえた。
それでも、驚きを隠しきれない様子で私の顔を覗き込んでくる。
「だって、この前は、好きな人と結婚したいって言っていたじゃない」
「……そうよ」
私は膝の上に置いた手を見つめた。
「お父様が決めた方なの。陸軍の少尉で、兄の親友なのだそうよ。お家柄も申し分ない方だって」
「それで、小春はどう思っているの?」
「どうって……」
私は言葉に詰まった。
どう思っているのか。
それがわからないから、困っているのだ。
「お優しい方だとは思うわ。礼儀正しいし、私の話もきちんと聞いてくださるし……でも、まだ二度しかお会いしていないのよ?」
「二度もお会いしたのね」
「そういう意味ではないわ!」
思わず声を上げると、麻友子はくすくすと笑った。
「ごめんなさい。でも、小春がそんなふうに悩んでいるの、少し意外だったわ」
「意外?」
「ええ。小春なら、お父様に向かって、嫌なら嫌だとはっきり言ってしまいそうだもの」
「……言ったわよ」
「まあ!」
今度こそ、麻友子は声を立てて笑った。
私もつられて笑いかけたけれど、すぐに表情を曇らせた。