大正初恋浪漫譚ー軍人少尉と婚約は突然にー
第一章 春、突然の縁談
春という季節は、どうしてこうも人の心を浮き立たせるのだろう。
女学校の校門を出た途端、頬を撫でる風に桜の花びらがひとひら舞った。
私はそれを捕まえようと手を伸ばしたけれど、あと少しというところで風にさらわれてしまった。
「ああ、もう!」
思わず声を上げると、隣を歩いていた友人の飯島麻友子がころころと笑った。
「小春は本当に、何にでも一生懸命なのね」
「だって、目の前にあるのに捕まえられないなんて、悔しいじゃない」
そう答えながら、私はもう一度、空を見上げた。
春はいい。
何か新しいことが始まりそうで、昨日まで叶わなかった夢だって、明日には叶うような気がする。
「そういえば、お梅さんのお輿入れが決まったそうよ」
「えぇっ!?そうなの?お相手は?」
私は思わず、麻友子の方に顔を勢いよく戻した。
「お相手はお梅さんのお家と同じ、貿易商を営んでいる方の次男さんだとか。お梅さんのお家は娘しかいないから、お婿さんをとった…と言ったところかしら」
「…ってことは、やっぱり親が決めた縁談ってことね」
私は目線を落とし、自分のハーフブーツを眺めた。