大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
「そうなるわね。でも、昔からお付き合いのあるお家だそうだし、きっとご両親もよく考えて決められたのでしょうね」
「それは、そうかもしれないけれど……」
私は言葉を濁した。
親が娘の幸せを願って、良い相手を選んでくれる。
その気持ちがわからないわけではない。
けれど、これから一生を共にする相手を、本人の知らないところで決めてしまうというのは、どうにも不思議な話だった。
「麻友子は、親の決めた方と結婚することになったら、どうする?」
「えっ、私?」
突然話を振られた麻友子は、ぱちぱちと目を瞬かせた。
「そうねえ……。お家のこともあるし、私一人の気持ちだけでは決められないのではないかしら」
「ううん、そういうことじゃなくて」
私は思わず足を止めた。
「その方のことを、好きになれるかどうかよ。だって、結婚したらずっと一緒に暮らすのでしょう?」
「まあ、それはそうだけれど……」
「だったら、好きな方がいいに決まっているじゃない!」
つい声が大きくなり、道の向こうを歩いていた婦人がこちらを振り返った。
私は慌てて口元を押さえた。