大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、彼は二年前から私に恋をしていたようですー
*
夕刻。
女学校から帰宅した小春は、玄関で出迎えたばあやに声をかけられた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。旦那様がお戻りになりましたら、書斎へお越しくださいますようにとのことでございます」
「お父様が?」
小春は不思議そうに首をかしげた。
「何かしら。私、何か叱られるようなことをした覚えはないのだけれど……」
「まあ、お嬢様ったら」
ばあやは、くすりと笑った。
「そのように慌てていらっしゃると、かえって何かございましたように見えますよ」
「もう、ばあや!」
小春は頬を膨らませた。
けれど、ばあやの笑顔にも、どこか普段とは違う雰囲気があった。
いったい、何の話なのだろう。
そう思いながら、小春は自室へと向かった。