大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー
もちろん、結婚相手に望むことが何もないわけではない。
優しくて、誠実で、一緒にいて心から笑える人。
できることなら、私の少々おてんばなところも、面白がってくれる人がいい。
そんな殿方と出会い、恋をして、いつか夫婦になれたら。
きっと、それは素敵なことだと思う。
「では、小春はどんな殿方が好みなの?」
「えっ?」
不意に尋ねられ、私は言葉に詰まった。
「ど、どんなって……」
「ほら、好きな人と結婚したいのでしょう?」
「そ、それはそうだけれど!」
麻友子は、いたずらっぽく笑った。
私は頬が熱くなるのを感じながら、彼女の肩を軽く叩く。
「もう! 麻友子ったら!」
ふたりで笑い合いながら、帰り道を歩いた。
そのときの私は、まだ知らなかった。
その日の夕刻、父の書斎で告げられた一言によって、自分の未来が思いもよらぬ方向へ動き出すことを。