大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー
「小春。明日、葛城少尉が我が家へいらっしゃる」
その日の夕刻。
父に呼び止められ書斎に来た私は、きょとんと首を傾げた。
「葛城少尉……ですか?」
「ああ。私の部下で、お前の兄とも士官学校時代から親しい間柄だ」
父は陸軍の将校であり、普段から厳格な人だった。
そんな父が、わざわざ私に客人の来訪を告げるのだから、何か大切な用件でもあるのだろうか。
「その方が、私に何か?」
「明日、紹介しよう」
それだけ告げると、父は書斎から出て行ってしまった。
何だか、妙に歯切れが悪い。
私は首を傾げたまま、一緒にこの話を聞いていた兄の顔を見た。
兄は何か知っているような、それでいて困ったような顔をしていたけれど、結局、何も教えてはくれなかった。
いったい、何なのだろう。
胸の奥に、小さな疑問が残った。