大正初恋浪漫譚ー陸軍少尉と婚約は突然にー
「少尉、あの、少しお聞きしてもよろしいでしょうか」
「何でしょう」
「お休みの日には、何をしてお過ごしになるのですか?」
思いがけない問いだった。
千紘は一瞬、返事に迷った。
「……特に、これといって」
「読書をなさるとか、お散歩をなさるとか、何かお好きなことはないのですか?」
「本を読むことはあります」
「どのような本を?」
「軍事に関するものが多いですね」
「……それは、お仕事のお勉強ではありませんか」
小春が少しばかり呆れたような顔をした。
そのあまりに率直な反応に、千紘は目を瞬かせる。
「そうでしょうか」
「そうですよ。お休みの日くらい、お仕事をお忘れになってもよろしいのではありませんか?」
「軍人ですから」
「それは存じております!」
あまりにきっぱりと言い返され、千紘は思わず口元を緩めた。
小春はその笑みに気づくと、なぜか少しばかり慌てた様子で視線を逸らした。
「……とにかく、お身体を大切になさってくださいませ。お忙しいのは分かりますけれど、少尉が倒れてしまわれたら、皆が困りますもの」
「皆、ですか」
「えっ?」
「いえ。そうですね」
千紘はそれ以上、何も言わなかった。