恋のエンドロールでキスをして【小説版】
珍獣でも見るような目をこちらに向けながら、面白げに唇を持ち上げている男に向かって、私はずいっと手を差し出した。

(ほんとやな感じ……!)

とことん失礼な奴だが、大事なDVDを渡してもらえばおさらばだ。二度と会うこともない。いや、仮にまた会ったとしてもこうして話すことだけはないのは確かだ。

「勝ったんだから、早くそれ渡して」

「そのまえに一個質問。なんでそんなにこの古くさい映画が見たい訳?」

「私の宝物だから」

「え?」

「その映画には、心の冒険っていう宝物が詰まってるのっ」

「心の冒険……」

なにかおかしなことでも言っただろうか?男は私の言葉を反芻すると、ふうんとなにやら満足そうな顔をしている。

「さっさと渡して」

「お前、やっぱ面白いな」

「なによそれ」

「映画好きに悪いヤツいないって言うし……」

男は私にDVDを渡そうとしてやめると、その端正な顔の横でDVDを振って見せた。

「一緒に見よ」

「えっ?!」

「はやく来いよ」

「何、言って……」

男はそのまま慣れた足取りで、壁際に並んで設置してある視聴覚コーナーを横目に、受付へと向かって行く。

「ちょっと……待ちなさいよっ」

理解が追い付かない私は数秒間、一人で呆然としてから、慌てて彼を追いかけた。

< 6 / 42 >

この作品をシェア

pagetop