恋のエンドロールでキスをして【小説版】
反射的に返事をしてしまってから、目の前の意地悪な顔にすぐに後悔する。

「ぷ。急に敬語かよ」

「だって……っ」

「ほら、ハナ見ようぜ」

「え?!」

名前を呼ばれたと思って大きな声が出たが、すぐに映画の主人公の《《ハナ》》のことだと気づき、恥ずかしくなる。

「ん? どした?」

「な、なんでもない」

「はい、こっち」


男は女の子と二人きりに慣れているようで、隣を手のひらでポンポンと触れ、座るよう促してくる。

(断ろうと思えば断れるけど……)

確かにじゃんけんで勝ったはずなのに、なんでこんなことになっているの全くわからない。

それに強引な目の前に男に嫌悪感を抱きつつも、どこか憎めないと思うのはなぜなのだろうか。

私の大好きな映画を彼も見たがっているからだろうか。
私は警戒しつつ、できるだけ間を開けてちょこんと座った。

「──夏宮怜(なつみやれい)」

「え、なに?」

「俺の名前。怜でいい。あんたは?」

「あ……えっと、有瀬(ありせ)……花(はな)」

「へぇ。『ハナと夢の国』の主人公と一緒じゃん。なるほどね」

「なるほどって何よ」

「さっき自分の名前呼ばれたと思ったんだろ」

「う、うるさいなぁ」

男の子と二人きりの空間に、緊張したのもあってちょっと嫌な言い方になったかもしれないが、怜は気にした様子もなく、ククッと笑った。

ソファーは二人用とはいえ思ったよりも狭い。怜が足を広げて座る横で私は足を揃えて座れば、ヘッドフォンが渡される。

「ほんと気ぃ強いよな。てか何年? その制服、野井(のい)中学だよな」

「……二年だけど」

「じゃあ敬語使えよ。俺、湖海(こみ)中学三年」

(え、まさかの年上……)
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