木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―

◇


「楓さんは、どんなところに住んでいるんですか?」

「春谷町と言って……自然が多くてのどかな町です」

楓は木にもたれながら言った。もう桜はすっかり散ってしまった。

「えっ、そうなんですか?僕も春谷町に住んでいます」

「えっ?」

「もしかすると、同じ場所に住んでいるのかもしれませんね」

同じ場所に……?

「じゃあ、同じ林に……?」

「そうかもしれませんね。楓さんがいる場所からは何が見えますか」


「えっと……山もあって、少し離れたところに大きな川が見えます」

「山と大きな川ですか。僕のいるところからも、見えますよ」

「そうなんですね……。あと、コンビニとスーパーがあります。他の町と比べて少ないし、遠いですけど」

「こんびに?すーぱー?」

「買い物ができるところです。コンビニはいつ行っても開いてますよ」

「へー。便利ですね」

かなたが感心したように言った。

楓は、木を見上げながら考えた。

もし本当に、同じ場所にいるのなら。

百年の時を隔てて、私たちは同じ木を見上げているのだろうか。


(本当に不思議……)



◇


「実は、ここに引っ越してきてから、なかなか友達ができないんです」


楓が視線を落としながら言った。

「それは、寂しいですね」
< 18 / 43 >

この作品をシェア

pagetop