木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
◇
「楓さんは、どんなところに住んでいるんですか?」
「春谷町と言って……自然が多くてのどかな町です」
楓は木にもたれながら言った。もう桜はすっかり散ってしまった。
「えっ、そうなんですか?僕も春谷町に住んでいます」
「えっ?」
「もしかすると、同じ場所に住んでいるのかもしれませんね」
同じ場所に……?
「じゃあ、同じ林に……?」
「そうかもしれませんね。楓さんがいる場所からは何が見えますか」
「えっと……山もあって、少し離れたところに大きな川が見えます」
「山と大きな川ですか。僕のいるところからも、見えますよ」
「そうなんですね……。あと、コンビニとスーパーがあります。他の町と比べて少ないし、遠いですけど」
「こんびに?すーぱー?」
「買い物ができるところです。コンビニはいつ行っても開いてますよ」
「へー。便利ですね」
かなたが感心したように言った。
楓は、木を見上げながら考えた。
もし本当に、同じ場所にいるのなら。
百年の時を隔てて、私たちは同じ木を見上げているのだろうか。
(本当に不思議……)
◇
「実は、ここに引っ越してきてから、なかなか友達ができないんです」
楓が視線を落としながら言った。
「それは、寂しいですね」