木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
かなたが同調する。
「……自分から声をかける勇気がなくて」
「勇気、ですか」
「私は違う町から来たので、なんだかみんな、私のことを変な目で見ているような気がして」
「そうですか。でも、もしかしたら、周りの人たちも楓さんに話しかけたいと思っているかもしれませんよ」
「……そうでしょうか」
「ええ」
◇
「じゃあ楓さんは一人でヴァイオリンを練習しているんですね」
「はい」
「すごいですね。僕は父から習っていて、今も聴いてもらってるんですよ」
「羨ましいな。私は、自分が上手くなっているのか分からないんです」
「僕はヴァイオリンは分かりませんが……楓さんの演奏を聴いて、感想を伝えることならできると思いますよ」
「あ、ありがとうございます」
◇
「楓さん。今日は、弟が学校で作ったものを持って帰って、僕にくれたんです」
「よかったですね!」
「はい。弟はとても器用で、なんでも上手に作れるんですよ」
「ふふっ。かなたさんは弟さんが好きですよね。よく話をしている気がします」
「ああ、そうでしたっけ」
少しとぼけたような言い方に、楓はくすっと笑った。
「兄弟のことが大好きな人のことを、今では『ブラコン』って言うんですよ」
「『ブラコン』……か。ははっ。じゃあ、僕は『ブラコン』ですね」
かなたは楽しそうに笑った。
◇
「楓さんは、この曲知ってますか」
かなたの尺八の音が聞こえた。
「あっ、知ってます!私も好きな曲です」
「じゃあ、今日はこの曲にしませんか」
「いいですね!」
◇
「かなたさん、私、友達ができたんです」
「本当ですか?よかったですね」
かなたはとても喜んでいた。