木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
そもそも、自分とこうしているのも、体に負担をかけているのではないだろうか。

「無理しないでくださいね」

楓はそう声をかけるけど、かなたは「大丈夫ですよ」としか言わない。

それに楓自身も、無理させていると分かっていながら、本当は……。

かなたの声が聞きたかった。



◇


次の日、かなたはやはり来なかった。

その翌日、大雪が降った。

ニュースでは、しばらく雪が降り続くと伝えていた。

いつも小雨程度なら、傘を差して林へ向かう。けれど、大雪となると……。

それでも、この前のかなたの様子が心配だった。

楓は学校から帰ると、傘を差し、すぐに林へ向かった。

林の地面は、ほとんど雪に覆われていた。

雪が止めば、きっと美しい景色が広がるだろうが、降り続ける雪はただ視界と足元が悪いだけで、景色を楽しむ余裕なんてなかった。

かじかんだ指先で、楓は木に触れた。

「こ、こんにちは」

「こんにちは」
声が返ってきた。

(よかった……)

楓はほっとした。

「今日は、体調がいいんですか」

「はい。今朝は、いつもより体が軽かったんです」

「よかった、です」

「ありがとう。楓さんはどうですか?」

「私は、元気ですよ」

「学校、どうでした?」

「今日は英語のテスト、があって、難しくて……」

少し話したところで、かなたに言葉を遮られた。
< 22 / 48 >

この作品をシェア

pagetop