木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
「楓さん」
「はい?」
「もしかして、そちらはとても寒いんじゃないですか?」
「えっ、どうして分かる……」
言いかけて、楓はしまったと思った。
「いつもより楓さんの声が震えていて」
少し考えたあと、かなたが付け加えた。
「とても辛そうだから」
楓は言葉を失った。
確かに、楓は寒くて、歯がカチカチと鳴っていた。
それでも、できるだけいつも通り話そうと心がけていたのに。
「帰りましょう」
かなたが言った。
「わ、私は大丈夫です」
せっかく、やっと、声を聞けたのに。
「いいえ、帰りましょう」
珍しく、かなたは強い口調で言った。
聞き分けの悪い子供を諭すようだった。
「分かり、ました」
楓は仕方なく頷いた。
それに、正直なところ、本当に寒さが限界だった。
「雪が……しばらく降り続くそうです」
「では、止んだら、またお話ししましょう」
楓は何も言えなかった。
「僕は、待ってますから」
かなたが優しく言った。
「本当に……?」
「本当に」
大雪の中、かなたの声がいつもより暖かく響いた。
◇
この日、楓は熱を出した。
そして、数日間寝込んでしまった。
まどろみの中、楓は夢を見た。
楓は大雪が止んだあとの、あの林にいた。
楓は、白いコートを羽織っていた。
林の雪景色は、楓が想像していたよりもずっと美しかった。
地面を覆う雪が、日差しを受けてきらきらと輝いている。
葉を落とした木々の枝には、ところどころ雪が積もり、まるで白い花を咲かせているようだった。
楓は一人ではなかった。
かなたもそこにいた。
濃い色の着物に、羽織を重ねていた。
二人は向かい合って立っていた。