木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―

「楓さん」

「はい?」


「もしかして、そちらはとても寒いんじゃないですか?」

「えっ、どうして分かる……」
言いかけて、楓はしまったと思った。

「いつもより楓さんの声が震えていて」

少し考えたあと、かなたが付け加えた。

「とても辛そうだから」

楓は言葉を失った。

確かに、楓は寒くて、歯がカチカチと鳴っていた。

それでも、できるだけいつも通り話そうと心がけていたのに。


「帰りましょう」
かなたが言った。

「わ、私は大丈夫です」

せっかく、やっと、声を聞けたのに。

「いいえ、帰りましょう」

珍しく、かなたは強い口調で言った。
聞き分けの悪い子供を諭すようだった。

「分かり、ました」

楓は仕方なく頷いた。

それに、正直なところ、本当に寒さが限界だった。

「雪が……しばらく降り続くそうです」

「では、止んだら、またお話ししましょう」

楓は何も言えなかった。

「僕は、待ってますから」

かなたが優しく言った。

「本当に……?」

「本当に」

大雪の中、かなたの声がいつもより暖かく響いた。





◇


この日、楓は熱を出した。

そして、数日間寝込んでしまった。

まどろみの中、楓は夢を見た。

楓は大雪が止んだあとの、あの林にいた。

楓は、白いコートを羽織っていた。

林の雪景色は、楓が想像していたよりもずっと美しかった。

地面を覆う雪が、日差しを受けてきらきらと輝いている。

葉を落とした木々の枝には、ところどころ雪が積もり、まるで白い花を咲かせているようだった。

楓は一人ではなかった。

かなたもそこにいた。

濃い色の着物に、羽織を重ねていた。

二人は向かい合って立っていた。
< 23 / 48 >

この作品をシェア

pagetop