木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
(もしかしたら、いつか会えるかもしれない……)
そんな期待が、楓の中で芽生えるようになった。
だけど--この木は、これ以上のことを二人に与えてはくれなかった。
◇
そして季節が巡り、再び春が訪れた。
桜が咲く木の下で、楓は幹に背をもたせかけ、かなたと一緒に演奏していた。
かなたも同じように背をもたせていた。木を通して、互いの体温が伝わる。
「楓さん、上手になりましたね」
「本当に?よかったです」
楓は少し頬を赤らめて言った。
「かなたさん」
「はい」
「お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「何か、リクエストありますか?」
少し考えてから、かなたが答えた。
「『もみじ』がいいです」
「えっ、今は春ですよ?」
「いいんです。楓さんのヴァイオリンで聴いてみたいんです」