木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―

第6話 私にできること



ゴホッ、ゴホッ


かなたが咳き込む声が聞こえ、楓は木を通して、かなたの背中をそっと撫でた。



「楓さん……」

「はい」

かなたは、ためらうように続けた。

「楓さんは、学校にお友だち増えたと言ってましたよね。僕のことはあまり心配せずに、お友だちと過ごしてもいいんですよ」

楓は手を止めた。

「私がいて、迷惑ですか?」

「違いますよ」

かなたの声が、すぐに返ってきた。

「ただ――」

「じゃあ、もうそんなこと言わないでください」

少し怒ったような声で、楓は言った。

「私は自分で選んで、ここにいるんです……この場所が好きなんです」

楓は、木に添えた手に力を込めた。

「……ごめんね。僕も、ここが好きですよ」

楓の手に、かなたの手の温もりが返ってきた。



◇



夏になった。


二人は木にもたれかかり、それぞれ座って本を読んでいた。

「暑くないですか?」

楓が尋ねた。

「木陰があるから、涼しいですよ。楓さんは?」

「私も。今日は何を弾きましょうか?」

「そうですね……」

かなたが曲名を告げた。
令和のポップスで、以前、楓が弾いた曲だった。
< 26 / 48 >

この作品をシェア

pagetop