木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
第6話 私にできること
ゴホッ、ゴホッ
かなたが咳き込む声が聞こえ、楓は木を通して、かなたの背中をそっと撫でた。
「楓さん……」
「はい」
かなたは、ためらうように続けた。
「楓さんは、学校にお友だち増えたと言ってましたよね。僕のことはあまり心配せずに、お友だちと過ごしてもいいんですよ」
楓は手を止めた。
「私がいて、迷惑ですか?」
「違いますよ」
かなたの声が、すぐに返ってきた。
「ただ――」
「じゃあ、もうそんなこと言わないでください」
少し怒ったような声で、楓は言った。
「私は自分で選んで、ここにいるんです……この場所が好きなんです」
楓は、木に添えた手に力を込めた。
「……ごめんね。僕も、ここが好きですよ」
楓の手に、かなたの手の温もりが返ってきた。
◇
夏になった。
二人は木にもたれかかり、それぞれ座って本を読んでいた。
「暑くないですか?」
楓が尋ねた。
「木陰があるから、涼しいですよ。楓さんは?」
「私も。今日は何を弾きましょうか?」
「そうですね……」
かなたが曲名を告げた。
令和のポップスで、以前、楓が弾いた曲だった。