木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―


◇


次の日、楓とかなたは、まるで別れなどないかのように、たわいもない話をした。

次の日も、次の日も。

けれど、楓は日に日に元気を失っていた。 
家族からも、何度も心配された。


もう、一人では抱えきれない。

楓はそう思った。



◇


学校の昼休み。
楓は、仲のいい圭に話しかけた。

「ねえ、圭。もしも、もしもだけど……」

楓は言葉を探しながら続けた。

「すごく遠くに住んでる人がいて、その人と電話でしか話せないの。
でも、ある日、その人と電話さえできなくなってしまったらどうする?」

お弁当の唐揚げをほおばっていた圭が、ぽかんとして楓を見た。

「しかも、その人は、病気を抱えているみたいで……」


圭はしばらく楓を見つめていたが、やがて真面目な顔になった。

「その人は、楓にとって大切な人なの?」
 
(大切な人……?

そんなこと、考えたこともなかった)

楓は、かなたに会ったことがない。

けれど。

温かくて、包み込むような優しい声。

いつも楓を励まし、どんな話でも聞いてくれる寛容なところ。

二人で音楽を奏でる時間。

どれもが、楓にとってはかけがえのないものだった。

「実は、会ったことがないから、顔を見たことがないの。でもね……」

楓はためらいながら、言葉を続けた。

「よく、その人に会っている夢を見る」


初めてかなたの夢を見て以来、楓はかなたが出てくる夢をよく見るようになった。

夢の内容は、日によってさまざまだった。
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