木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―

関係がありそうな本を片っ端から探し、何冊か借りることにした。

今日、林から帰ったら読もう。


◇

かなたは、今日もいた。

「今日楓さん、元気がいいですね。何かいいことがありました?」

かなたは少し笑っているようだった。

「いえ……あ、学校がいつもより楽しかったです」

楓は、今自分がしていることを、かなたには言わないでおこうと思った。

「かなたさんも、今日は調子がよさそうですね」

「はい。天気がいいからでしょうか。気持ちもつられて明るくなります。それに、楓さんがとても楽しそうだから」

「え、私?」
思いがけない言葉に、楓は驚いた。

「僕は、楓さんの笑い声が好きです。とても落ち着きます。ずっと笑っていてほしいと思います」

(なんて、強い人なのだろう)

楓は胸が熱くなった。

(かなたさんは、きっと気付いている。
最近、私が元気がないことを。
その理由は自分であることを。

本当は、不安でいっぱいなのは、かなたさんなのに。

それでも、笑ってほしいと言ってくれた)


「私も、かなたさんの笑い声が好きです」

本当は――。


語りかけてくれるような落ち着いた声も。

低くて心地よい声も。

全部好きだ。

楓は、そう叫びたいのをぐっとこらえた。


◇


図書室で借りた本を読み漁っても、これといった手がかりは見つからなかった。

ダメ元で始めたことだから、こうなる可能性は分かっていたけれど、気持ちは落ち込んだ。
< 32 / 48 >

この作品をシェア

pagetop