木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
楓は、かなたの言葉に涙があふれた。
「ええ、もちろん」
かなたには見えないけれど、楓は大きくうなずいた。
Maiさんが話してくれた、あの声が消えてしまうかもしれないという話は、かなたには黙っておくことにした。
かなたのせっかくの思いを、壊したくなかったのだ。
そして夕日が沈み、辺りは暗くなった。
いつもならもう帰る時間なのに、二人とも動こうとはしなかった。
やがて、夜空に星が一つ、また一つと輝き始めたころ。
ずっと黙っていたかなたが、口を開いた。
「初めて、一緒に夜の空を見ましたね」
(一緒に……)
今、この夜空を、百年前にいるかなたも見ているのだ。
「綺麗、ですね」
楓は言った。
見えている夜空は違うと分かっていても、言わずにはいられなかった。
「はい。今まで見た中で、一番美しいです」
かなたがそう答えた。
しばらく夜空を眺めていると、かなたの静かな声がした。