木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
第9話 会えたね
「でも、どうしてあおとさんが来てくれたんですか?かなたさんは……」
そこまで言って、楓は口を閉じた。
かなたの声が聞こえない理由が分かったのだ。
「聞こえかったんですね、私の声が。私も、かなたさんの声が聞こえない。でもかなたさんは、いるんですね」
楓がつぶやくと、あおとはうなずいた。
「かなたさんは、五年後も、十年後も、楓さんとの約束を果たそうとしていました。でも、楓さんの声は聞こえなかったそうです」
(かなたさん……何度も来てくれていたんだ)
「かなたさんは楓さんのことを心配していましたが、この不思議な現象にも、いつか終わりが来るのだと悟ったそうです。
同じ現象を体験したかなたさんのおじいさんも、ある日突然、女の子の声が聞こえなくなったそうなので」
あおとはそう言うと、もう一通の古びた封筒を取り出し、楓に差し出した。
「かなたさんは、祖父宛てだけでなく、楓さんにも手紙を書いていたんです」
「えっ」
「これが、託された手紙です。父から受け取りました。
かなり古くなってしまいましたが」
あおとは、少し申し訳なさそうに言った。