木の下の奏者たち― 桜の木がつないだ声 ―
楓は黙って、あおとの話に耳を傾けた。
「手紙には、もう一つ、かなたさんからのお願いが書かれていました。
もし楓さんに会うことができたら、一緒に演奏してほしい、と」
あおとは桜の木を見上げた。
「……かなたさん。ようやく、約束を果たせそうです」
静かにそう語りかけてから、あおとは楓に向き直った。
「楓さん。僕と演奏してくれませんか。二人の思い出の曲を」
楓は、大きくうなずいた。
ヴァイオリンをケースから取り出し、構えた。
弓を弦に滑らせる。
あおとは尺八を口元に運んだ。
五年前と同じように、二つの音が重なり合う。
桜の花びらが、ひらひらと舞い落ちる。
楓は演奏を続けながら、思った。
(あおとさんの尺八の音、かなたさんと似ている。
本当に、かなたさんのすぐそばで演奏しているみたい……)
音が一つ一つ粒になり、かなたとの思い出とともに、楓の心に降り落ちていく。