若き警備会社社長が愛する奥様は元怪盗だったのです

「楽しみにしてますね! 警備会社のお兄さん」

 夜の闇に溶けた彼女の足もとに、小さな粒がひとつ転がっていた。
 それは月明かりに光る、ジェリービーンズだった。
 時価数十億円とも言われるブルームーン・ダイヤはなぜか傷ひとつなく金庫の奥に取り残され、何事もなかったかのように煌めいている――……。


   * * *


 翌朝、鷲尾は警察に連行された。
 ブルームーン・ダイヤの台座には、密輸取引の台帳が隠されていたのだ。
 それが匿名で警察に届けられ、その結果、鷲尾の犯罪が白日のもとにさらされることとなった。
 その台座が盗まれたものだと被害を訴えたくても、鷲尾にはできなかった。なぜなら盗まれたものの出所を調べられれば、自分の罪が露見してしまうのだから。
 社長室で真実を知った護は呆然としていた。

 ――彼女は、宝石を盗みに来たんじゃなかったのか。

 手のひらの上でジェリービーンズを転がしながら、護はぽつりとつぶやいた。

「……次は、必ず」
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