若き警備会社社長が愛する奥様は元怪盗だったのです
「昨日、陽向と庭で遊んでたら、つい」
「つい、で見抜くな! うちの最新鋭だぞ」
「最新だろうがなんだろうが、三秒あればわたしなら入れます」
さらりと言うと、護は片手で顔を覆った。
「俺の会社の製品を、朝食のついでに論破するな……」
「だって事実じゃない」
夫は仕事では完璧な社長で、妻には少しだけ弱い。その「少しだけ」が、瑠那はたまらなく好きだった。
「ママ、すごいね! 悪いやつよりすごいね!」
陽向が目を輝かせる。護が複雑そうな顔をしている。
「ひーくん、ママは悪いやつじゃないんだ。ママは……」
「昔、怪盗だったんでしょ?」
ピシッ、と空気が凍りつく。無邪気な発言を耳にした瑠那と護は、同時に息子を見つめる。
陽向はにこにこしながら、小さな手を開いた。そこには、ジェリービーンズが一粒。
「パパの靴に入れといたの。ママのまねっこ!」
「ひーくん、それ、どこで……」
「パパの引き出しに、いっぱいあったよ」
護が、ゆっくりと瑠那を見る。瑠那も、ゆっくりと護を見た。
「……護さん、捨ててなかったの?」
「捨てられるか」