若き警備会社社長が愛する奥様は元怪盗だったのです
思わず頬が熱くなる。出逢いの夜に残したジェリービーンズを、この人はずっと取っておいたのだ。
「ひーくん、パパとママの秘密、だれかに言った?」
「言ってないよ。ひーくん、秘密守れるもん」
小さな胸を張る息子の頭を、瑠那は撫でた。どうやら、小賢しさは母親譲りらしい。
「じゃあ、パパとママと、三人の秘密ね」
「うん!」
窓の外では、穏やかな朝の光が庭の芝生を照らしている。
* * *
午前十時の公園は、子どもたちの笑い声で満ちていた。
瑠那はベンチに腰かけて、砂場の陽向を見ている。小さなスコップで山を作り、トンネルを掘る真剣な横顔は、護が書類を読むときの顔にそっくりだ。
「ママ、見てー! おっきいの作る!」
「はいはい、見てるよ」
手を振り返したとき、バッグの中でスマホが震えた。護のオフィスからの確認メッセージだった。夕方の来客の予定について。
返信を打つのにかかった時間は約三十秒。
ふと、顔を上げる。
砂場には、スコップと、作りかけの山、それから陽向の青い帽子だけが残されていた。
「……ひーくん?」