呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 約十分後、キッチンから出てきた副社長の姿に、心臓が大きく跳ねた。ジレの上からグレーのエプロンを着け、両手にお皿を持っている姿は、呉服会社の御曹司というよりカフェ店員の方がしっくりくる。
 西洋系の容姿との相性が怖いくらい抜群で、心臓がにわかに忙しくなった。

「はい、どうぞ」

 目の前に置かれた料理に私は目を瞠る。

「ビーフシチューだ……おいしそう!」

 お肉はひと口では入りそうにないほど大きく、シチューというよりはブラウンソースがかかった牛肉という感じだ。ニンジンのグラッセとブロッコリーが添えてあり、盛り付けもレストランのようだ。

 続けてほうれん草のキッシュとエビとブロッコリーのサラダも運ばれてきた。どれもおいしそうで、思わずゴクンと生唾をのみ込んだ。

「苦手やアレルギーを聞くのを忘れてた。もしあれば遠慮なく言って」

 副社長が心配そうに聞いてくる。

「いえ、大丈夫です。全部好きなものばかりでびっくりしました」
「よかった。作り置きで申し訳ないけれど、味は保証するよ」
「えっ! もしかして副社長が作られたんですか⁉」

 コンロやレンジを使っていたのはわかっていたけれど、あまりに出来上がりが早かったため、てっきりデパ地下のデリカや、温めるだけの高級パウチ食品だと思っていた。

 副社長は笑顔のまま目をスーッと細める。

「柊真」
「え?」
「そう呼んでと言っただろう?」

 口元は微笑みの形なのに、目が笑っていない。
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