呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 私は「うっ」とたじろぐ。
 お世話になるだけでも恐れ多いのに、いきなり下の名前で呼ぶなんてハードルが高い。
 なんせこちらは女子校育ちで異性と親しい交流をしたことがない。それなのに、そんな無茶ぶりをされても……。

「さ、早く」

 ニコッと笑った顔は見惚(みと)れるほどきれいなのに、そこはかとない強制力を感じる。変な汗が背中ににじむのを感じながら口を開いた。

「と……柊真さん」

 口にした途端、顔がカーっと熱くなった。彼はそんな私を見て満足そうな笑みを浮かべる。

「さっきの質問の答えはYESだ。ここにあるものは全部俺が作った。料理が趣味でね」
「すごい……これを全部……」

 まるで洋食屋のような料理がのったお皿に、再びくぎ付けになる。

「冷めないうちに食べて」
「ありがとうございます。いただきます」

 湯気が立つシチューがおいしそうでたまらず、お腹がもう一度なる前にいただくことにする。
 スプーンを持ち上げようとした瞬間、手にズキンと強い痛みが走った。

「痛っ……」

 落としたスプーンが食器に当たり、ガチャンと不快な音を立てた。

「ごめんなさいっ」

 こんな無作法をしてしまうなんて。
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