呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 もう、知らない!

 思いきって口を開くと、すぐさまスプーンが入ってきた。一気に口の中がビーフシチューの旨味でいっぱいになる。

「んーーっ」

 牛肉は噛む前から口の中でほろほろと崩れ、口の中にお肉のうまみが広がっていく。あっという間に消えていくお肉を惜しみながら飲み込んだ。

「すっっっごくおいしいです! お肉が柔らかくて、デミグラスソースは濃厚なのに後口がよくて……こんなにおいしいビーフシチューを作れるなんてすごいです!」

 興奮しながら感想を伝えると、柊真さんは目をしばたたいた後クスッと笑った。

「レポうまいね」
「あ……」

 興奮のまま勢いで語ってしまった。恥ずかしさに頬が熱くなってうつむく。

「ありがとう。素人料理をそんなに丁寧に褒めてくれて。作ったかいがあるな」

 ふわりと優しい表情で微笑んだ彼に、胸がキュッと甘く締まる。

「結衣、ついているよ」

 ん?と思って顔を上げた途端、伸びてきた手に口元をサッとぬぐわれた。

「なっ……!」

 声も出せずに固まっていると、柊真さんは親指についたソースをペロッと舐める。

「うーん、もうちょっとブラックペッパー効かせてもよかったかな」

 彼は平然とつぶやくと、真っ赤になったまま動きを止めている私を見て、ニコッと笑った。

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